第7回 ベーゼンドルファーのおはなし

~~~ ベーゼンドルファーのおはなし ~~~

(文:川口成彦)

(文:川口成彦)

 

第7回 希望と祈りのベーゼンドルファー~震災を乗り越えて~

 皆さまこんにちは。新年度を迎える4月いかがお過ごしでしょうか。桜舞い散る素敵な春、岩手県の盛岡にあるBar Cafe the Sには音楽を愛する人々が集い、ライブが賑わいを見せています。このバーにはオーナーの堀内繁喜さんをはじめ沢山の人々の想いが詰まった素敵なベーゼンドルファーのピアノがあります。おしゃれな店内に上品に佇む1939年製のベーゼンドルファー。この空間でお酒を飲みながら音楽を楽しむのは至福の一時でしょうね。

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   このベーゼンドルファーのピアノ、実は今美しい音を奏でているということが奇跡のような楽器なのです。この盛岡のお店は宮古にあったJAZZバーが2011年7月に移転して再オープンしたものです。その年の3月11日に起きたあの忘れることの出来ない大地震。宮古の街でこのベーゼンドルファーのピアノは津波に飲み込まれました。想像を遥かに超える大津波。目を疑うような変わり果てた街並み。停電となった宮古の夜空はプラネタリウムのように美しく、、なんだかとても言葉に仕切れない、、、。白いはずの鍵盤は泥で汚れ、音はきっと出るに違いない!と微かな希望を抱いて鍵盤を押すも、何もピアノは語ってくれない。

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  絶望に打ち拉がれる中、何でも良いから出来ることはないだろうかと、鍵盤を洗って泥を落とす作業をしたりしながら薄っすらとも見えない希望をなんとか信じるだけの日々だったようです。そして4月の中旬にベーゼンドルファーを購入した群馬のピアノプラザの社長さんがはるばるトラックでやってきて、やっと得ることの出来た安堵感。まだ道路も高速もかなりガタガタの中、ピアノは群馬に運ばれていきました。そしてあの望みの無い悲惨な状態から見事に復活を遂げ、盛岡で新しくオープンしたBar Cafe the Sに還ってきました!ピアノは無償で修復されたようで、人間の温かさを感じます。再び音楽を奏でることが出来るようになったベーゼンドルファー。「ピアノが喜んでいます」。堀内さんはそう語って下さいました。

 

   宮古でJAZZバーを経営していた時、その土地で生まれたJAZZピアニストの本田竹広さん(1945-2006)がしばしば堀内さんのバーに訪ねていたそうです。本田さんはよく堀内さんにベーゼンドルファーのピアノをおすすめしていたようで、本田さんがお亡くなりになった後に堀内さんはベーゼンドルファーのピアノを手に入れたようです。そんな楽器との巡り会いの後の悲劇。そしてその後の奇跡的な楽器の復活。私のこの短い文章ではとてもとても語り尽くせません。盛岡にお立ち寄りの際は、皆様是非the Sのベーゼンドルファーにお会いしてみてください!楽器の音色に多くの方々の想いや希望、祈りがきっと詰まっています。

 

  Bar Cafe the S ホームページ : http://livecafe385.com/thes/

 

  さて日本全国には盛岡のthe S の他にもベーゼンドルファーのピアノを身近に味わえる素敵なバーやレストランが色々あります。例えば兵庫県西宮の甲子園口からすぐのフレンチA La Maison Jean-Paul (ア・ラ・メゾン・ジャンポール)にはアップライトのピアノがあります。グランドタイプのピアノとはまた違った味のあるアップライトの音色をお楽しみ頂けます。ベーゼンドルファーのアップライトピアノはモデル130CLというものです。グランドピアノと同様に職人が作り上げる上質なピアノです。第7-5

  その他には自然食レストラン 茜に吹く風 (岐阜県岐阜市)、やわらぎの味 布武 (岐阜県岐阜市)、サロン・ドゥ・アヴェンヌ(大阪市北区)、サン=ルイ・アミューズ (大阪市北区)、コンチェルトハウス (広島市中区)、 オーストリッヒカフェ・ウィーン (山口県周南市)、長楽館 (京都市東山区)、三田屋本店やすらぎの郷 (兵庫県三田市)、アルテリーベ (横浜市中区)、フランス料理 シェ・モルチェ (東京都広尾) などを見つけました。大きなコンサートホールだけでなく、ベーゼンドルファーの音色を楽しめる場所はたくさんありそうですね!!

 

 最後に改めまして貴重なお話しや写真を提供して下さった盛岡のthe S さま、アップライトピアノの写真を提供してくださいました西宮のア・ラ・メゾン・ジャンポールさま、本当にありがとうございました。